2019/11/17

TRANSIT編集部(2018)「TRANSIT No.41」講談社

2018年に発刊された、ニューヨークをマンハッタンからアップステートまで幅広く特集した珠玉の一冊。トランプ政権に対する市民の声、女性活躍、アートシーン、ニューヨークで生きるということの過酷さと、マンハッタンを飛び出した挑戦者が開拓する新しいニューヨークまで、とにかくニューヨークの光と影をありとあらゆる角度から(ただしリベラルなスタンスで)わかりやすく解説している。ニューヨークには観光で一度しか行ったことがないけれど、本誌の中では数字で東京と比較するデータ一覧が掲載されていたり、アメリカ史の中でのニューヨークが果たしてきた役割が何ページにもわたってイラストつきで解説されていたりと、十分にイメージをふくらませることができた。90%の住民はどこかから移り住んでいるというニューヨークで、幾度となくフランク・シナトラの「New York, New York」を合唱する姿を見てきたという野村訓市の言葉からは、東京の雑踏に憧れ、東京にしがみつき、東京にいることそのものがアイデンティティになる地方出身の日本人を連想することが難しくない。歴史がある、文化がある、誇りがあって、競争があるニューヨークについて熱く語る人々の記事を読めば読むほど、どこか一昔前に流行った音楽の解説を聞いているような気持ちになる。もっといえば、ニューヨークや東京のような大都会の未来には、デトロイトや夕張のような未来が待っていそうな雰囲気さえ感じられ、夢があると言われても醒めていくような読後感。それほどこの一冊がニューヨークの現実を突きつける強烈で最高の特集なのかもしれないし、それこそがTRANSITという雑誌の凄みなのかもしれない。