2019/10/19

鈴木大裕(2016)『崩壊するアメリカの公教育 日本への警告』岩波書店

米国に16歳から留学し、日本での教員経験をもちながらさらに米国の大学院で博士課程へと進んだ教育研究者ならではの、新自由主義経済が教育現場を蝕んでいく潮流を描いた懇親の一冊。著者自身が二人の子どもを実際に米国で育てたこと、保護者として積極的に子供たちの学校にかかわったこと。そして研究者として、米国の教育学が何を危惧しているかがすべてひとつの線でつながっていく。とりわけショック・ドクトリン以降の、社会的危機をきっかけに貧困層や社会的弱者のテリトリーを民間企業を母体とする経済活動が食い荒らしていく様子は、社会保障から社会排除へと進むアメリカ社会の大きな流れを、企業という売り上げ至上主義の法人が図らずも引き取っていくようにも読むことができる。教育格差の問題は、社会格差の鏡でもあり、そうした格差社会の黒幕は、政治なのか、経済なのか、あるいは「競争」せざるをえない人間すべてなのか、読んでも答えがでることのない珠玉の一冊。

2019/10/14

関眞興(2019)『一冊でわかるアメリカ史』河出書房新社

アメリカ建国から、2010年代のトランプ大統領誕生までを大統領、戦争、経済状況を軸としてまとめた入門書。10月12-13日に広島大学で開催された教育哲学会の移動時間、空き時間に通読。著者は大手予備校の講師ということもあり、高校生に戻っていちからアメリカのことを知るような気分で読み進められる。個人的に興味深かったのは、とりわけ20世紀に入ってからのアメリカの戦争と経済状況の関連。なかでも1929年10月24日からはじまった「世界大恐慌」の様子は、そう遠くない昔の出来事であるにも関わらず、不況と戦争の関係を身近に感じることができる。